若杉 鳥子 は 1892-1937 大正-昭和時代前期の小説家。「烈日」がみとめられ,女性プロレタリア作家の草分けとなった。
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若杉 鳥子 は1892-1937 大正-昭和時代前期の小説家。
明治25年12月25日生まれ。茨城県古河の芸者置屋の養女となるが,家業をきらって上京し「中央新聞」記者となる。大正14年
「文芸戦線」に発表した「烈日」がみとめられ,女性プロレタリア作家の草分けとなった。昭和12年12月18日死去。46歳。東京出身。遺稿集に「帰郷」がある。
本文内容見本
3 雨の回想
若杉鳥子
ゆうべからの雨はとうとう勢いを増して、ひる頃から土砂降りになった。樹の葉は青々と乱れ、室内の物影には、蒼黒い陰影がよどむ。
私は窓から、野一面白い花でうごめいている鉄道草の上に、雨のしぶくのを見ていたが、私はいつか知らない土地で、何時 霽《は》れるとも知れぬ長雨にあって、やはりこうして降る雨をみつめていた、子供の時の気持ちを思い出した。
それは何処の土地だか知れないが、向こうの神社の杜の中から、お神楽の太鼓が響いて、時々子供達の騒ぐ声が、波のようにきこえて来た。向こうの藁葺屋根の暗い軒端に、祭礼と書いた赤い万灯が立て掛けてあって、それが雨に濡れて字が滲み、ぽたぽたと赤い雫を落としていた。私は何ともいえない、うら悲しい気持ちで、その百姓家の窓から、これらの風物を見つめていたのだった。だが、「もう帰ろうよゥ」ともいい出せない、せっぱ詰まった事情でそこに雨宿りしているということは、子供ながらに知っていた。そして帰りたいのを凝と堪えていたのだった。
それは多分、私の里子にやられていた家の親達が、もう百姓の仕事を止めて、旅商人になってからのことだったと思う。
一家は玩具や雑貨の荷を背で負って、盛り場から盛り場へと歩いてゆく父親に随《つ》いて、祭礼や縁日のある土地へ行った。何処ででも行き着いた土地へ天幕の店を張って、地面へ薄ベリのようなものを敷いて、玩具のサーベルやラッパや安っぽい花簪や、蟇口の類を並べ、そして唄のように節をつけてお客を招ぶのだった。私もいつかその口 擬《ま》ねを覚えて、天幕の店へ坐っていた。お神楽の太鼓や疳高くピイピイ鳴る風船の笛、或いは爆竹の音、アセチレン瓦斯、おでん屋の匂いなんかの中に、凍えるような夜をふかすのだった。
代表作品
浅間山麓
旧師の家
職業の苦痛
棄てる金
母親
独り旅
名作速読朗読文庫vol.591若杉 鳥子全集読上機能付きProfessional版
vol 件数 作家名 タイトル カテゴリー/文字数
591 1 若杉 鳥子 浅間山麓 小説 2732
591 2 若杉 鳥子 新しき夫の愛 牢獄の夫より妻への愛の手紙 随筆 8766
591 3 若杉 鳥子 雨の回想 小説 2249
591 4 若杉 鳥子 ある遊郭での出来事 随筆 5804
591 5 若杉 鳥子 旧師の家 小説 1954
591 6 若杉 鳥子 職業の苦痛 随筆 4678
591 7 若杉 鳥子 棄てる金 小説 2016
591 8 若杉 鳥子 母親 小説 7254
591 9 若杉 鳥子 独り旅 小説 1943
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